ジャンピングについて

 突然ですが,皆さんは「必要十分条件」をご存知でしょうか.数学の用語です.

 A,Bというふたつの条件があって,両者の間に

 「Aが成り立つとき,必ずBが成り立つ」

 という関係があるとき,「AはBの十分条件である」「BはAの必要条件である」と呼びます.

  これはいったん置いておくとして,記事タイトルのジャンピングに話を移しましょう.

 「ジャンピング」は,紅茶について調べ始めたばかりの段階で出てくるような用語です.「美味しい淹れ方」を謳うサイト(当サイトも似たようなものですが…)から、紅茶の専門書にまで幅広く登場します.だからこそ,言わせていただきます。

 

 ジャンピングに関するほとんどのお話は,誤りです.

 

 以下にぼくがそう考える理由を挙げていきます.

1.日本紅茶協会が「ジャンピング」に触れていない

 「そんな協会があったの?」という方も多いかと思いますが,日本紅茶協会はティーインストラクターの養成や,全国の紅茶専門店へお忍びで訪問し「おいしい紅茶の店」認定を行う伝統ある協会です.

 そんな日本紅茶協会のHPに「ゴールデンルール」(“美味しい淹れ方”の気取った呼び方だと思ってください)のページがあるのですが,そこではジャンピングについて一言も触れていません!

 ジャンピングが本当に紅茶を美味しくするコツならば,協会がそう言っているはずなのです.

2.説明はするのにとってもあいまい

 ​ジャンピングについて肯定的に記述している文章は,たとえば「抽出中に起こる対流によってジャンピングが発生します。これが紅茶を美味しくするのです」といった具合の説明をしています.でもこの説明、なんだかおかしくありませんか?

 ①茶葉の動きは対流が原因ではない

  対流によって動いていたら,あんなに不規則には動きません。

 ②どんな茶葉を使用した例なのか記載していない

  大きな茶葉も,細かな茶葉もあります.みんな同じ動きをするでしょうか? ありえませんよね.

 ③茶葉が動くだけで美味しくなるなら,なぜポットを置きっぱなしにする?

  シェイカーに入れて振ったり,マドラーでかき混ぜる文化が主流になっていないとおかしいですよね.

 こんなあいまいな説明で「美味しくなる!」とは,ちょっと信じがたいですね.

3.説明の仕方が間違っている

 ここで,最初の数学のお話を使います。

 多くのサイトや本は「ジャンピングが起きると,美味しくなる」と言っているわけです.つまり,

 「ジャンピングが起きるとき,必ず美味しい紅茶ができる」

 といった具合です.

 逆なんです.

 「美味しい紅茶を作るとき,必ずジャンピングが起きる」

 が正しいんです.より正確に言うと,

 「美味しい紅茶を作るとき,ジャンピングが起きる……かもしれない」

 くらいなので,逆ですらないですが.日本紅茶協会がジャンピングについて否定も肯定もしていないのは,正確な原因が解明されておらず,起きたり起きなかったりする不安定な現象だからでしょう.

 実際に紅茶を淹れる過程においては,ジャンピングが起きるように配慮することはすなわち美味しい紅茶が出来るように配慮することとあまり変わらないので,前者の説明でマズい紅茶ができるわけではないですが,だからといって間違った話を広めていい道理はありません.

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